民主党代表選に思うこと

 菅氏ファンの友人から、私が菅氏に厳しく小沢氏に甘い、菅氏はマスコミに総理の座を引きずり下ろされた被害者であるとの指摘を受けた。

 しかし、私は思う。マスコミを利用して、政権を延命してきたのは菅氏も同じだ。一橋大学名誉教授の渡辺治氏の論を参考にこれまでの管政権の政治運営を見てくると以下のようになる。

 本来菅政権は昨年7月の参議院選挙の不信任結果をもって終わるべきだった。しかし、消費税増税とTPP交渉の開始を掲げ、鳩山政権で市場原理主義漸進路線に切り替えていたものを、急進路線に逆戻りさせたことから、財界とマスコミの支持を得て政権を手放さず、マスコミがこぞってこれを支援し、逆に言葉の上だけで反市場原理主義を唱えていた小沢をたたいて政界から追放しようと策略した。菅氏はこの波に乗りつつ妥協を重ね、元自民党の急進市場原理主義派の与謝野氏を取り込み、社会保障と税の一体改革と称して市場原理主義路線の急進化を進めていった。

 ところがはさらに続く。菅氏は衆参両院のねじれから国会で重要法案をほとんど通すことが出来ず、財界の期待に応えられない。当初財界は菅氏の路線に合わせて自民党が大連立にのってくるものとばかり考えてたが、菅政権のもとでの市場原理主義路線に反対する国民の離反による菅政権の支持率の低下を見た自民党は、菅氏主導の泥舟政権に乗るよりも、解散総選挙を通して第一党を確保し、その上で首相をとって自民党優位の大連立、憲法改悪、アメリカと一体となった軍事大国化、消費税増税路線を模索しはじめ、財界の筋書き通りの大連立の道には進まなかった。谷垣自民党の親の心子知らず路線の始まりだ。

 こうした中で政治がいっこうに前に進まない状況が作り出される。菅政権は2月時点で自然崩壊寸前、ところが3・11で菅氏は、財界の提起した市場原理主義改革をを保障する震災復興を錦の御旗に再び延命を図ろうとする。しかし、いっこうに進まない改革に、菅氏は口さきだけの「市場原理主義急進路線」ではないかという財界の声で、財界もマスコミも菅おろしに転じる。いわゆる「能力不足」「思いつき政策」論だ。菅氏は国民の支持を得ることで最後の打開を試みるが、いっこうに復興が進まない被災者の方々のいらだちや窮迫する国民生活の危機、国の原子力政策に対する不信感から支持率支持率は回復しないまま終焉を迎えているというのが政治の大まかな流れではないだろうか。
 
 今や民主党内のわずかな一致点は、政策よりも2013年8月の任期満了までは衆議院を解散せず、自民党には政権を明け渡さず、何とかその枠の中で支持回復を目指すということだけになってしまったような気がする。しかし、民主党内に支持回復を目指す政権運営が出来る人物がいない。ここに民主党の大きな矛盾点がある。

 仮に海江田氏が総理になっても、一番恐れるのは「小沢傀儡」とたたかれることだろうから、一定の独自路線をとらざるを得ない。小沢氏はそれを許さない。この政権も短命でしかかない。
 前原氏が政権を取れば、アメリカや財界にとっては1段階飛び越した政権の登場になる。次の総選挙では争点なしの改憲、消費税増税の信任投票になってしまうことだろう。小沢氏は党を割ってしまう可能性もある。

 元来小沢氏は市場原理主義派で、TPPの賛成論者でもあり消費税増税派だが、国民の支持をかすめ取るために今のところ口では市場原理主義漸進路線の立場をとっているように見える。自民党内にもこういう人たちがいる。私は市場原理主義はこれ以上進めてほしくない。やめてくれという立場だから、小沢氏が旧来の自民党を象徴している政治家であることは十分に知った上で、口先だけでもそれを言っている小沢氏を政界から抹殺するという議論には組することが出来ない。保守と革新はしのぎを削っていい政治が展開できるが、反動には退場してほしいというのが私のスタンスだからである。
 
 自民党政治の復活を許すのではなく、民主党主導で構造改革路線をこれ以上少しでも進ませず、2009年8月のあの熱気、「市場原理主義改革」はやめてくれという国民の声に焦点を合わせ、これを争点に2013年にたぶん実施されるであろうダブル選挙を実施してほしい。

 大連立の中での改憲や消費税増税の信任投票にしてはならない。そんなことになったら日本は大変なことになる。

 これが私の考える少しはましな選択だ。

 でも、本当はもっといい政治、選挙制度を改めて民意を正確に反映できる選挙制度にし、昨日書いた7項目が実現できる政治を望んでやまないことは言うまでもない。