4月1日、消費税が8%に増税されました。牛丼についてみると、大手三社は並盛りは3軒とも280円(本体価格266円66銭)でした。これをそのまま8%の消費税をかけたとすると266円66銭×1,08=287円99銭になります。本体価格が変わらなければ、3軒とも287円になったはずです。
 ところが実際は、吉野家は300円(本体価格277円77銭=11円11銭の値上げ)、すき家⇒270円(本体価格250円=16円66銭値下げ)、松屋⇒290円(本体価格268円51銭=1円85銭値上げ)としました。
何故こんなことが起こるのか。これは、ものの価格(物価)は、需要と供給の関係はじめ、ときの経済状況等をどう見るかによって、事業者が決める問題だからです。決して政府の思い通りになることではないのです。だから、消費税増税によってすべての物価が3%上がりはしなかったし、それ以上上がったものも出てきた。さらには内税398円が本体価格398円+外税8%(税込み429円)と3%ではなく8%上がったものも出てきました。
 ここに消費税の隠れた本質があります。消費税は物価として私たちに一部になわされていることは事実ですが、納税義務を負っているのは事業者です。
 そして例えば、「吉野家」は、私たちが300円支払ったその8%である24円を預かり金として全額税務署に納めているのではなく、「仕入れ税額控除」と言って「肉代=80円」、「タマネギ代=5円」、「たれ=30円」、「ご飯250㌘=40円」、「お茶、紅ショウガ、紙ナプキン=20円」で約175円+光熱費の合計の8%=15円+αを差引いた10円以下の消費税しか払っていないのです。あとは誰が支払うのか。肉屋、八百屋、米屋、運送業者、包装業者など、大手業者を前に消費税を価格に転嫁できない力の弱い「事業者」が納めるというわけです。ここで、「吉野家」という固有名詞ではなく、「大企業」と「事業者=下請け」という一般名詞に置き換えていただくとこの関係はさらによくわかります。力関係で弱いところへ弱いところへと消費税は転嫁されていくのです。つまり、消費税は、一食270~300円程度の支出しか出来ない低所得者層からもむしり取る税金であること、業者の中では弱小の業者が、大業者に税金を負担させられるというとんでもない税金であることがわかります。
ここで、「吉野家」を「トヨタ自動車」に置き換えてみましょう。トヨタは自動車を輸出していますから、輸出先からは消費税をとれません。そこで0税率が適用されます。しかし、トヨタは同じように下請けに、部品代等相当分の消費税を形式上支払っています。消費税を海外の消費者からとれない「トヨタ自動車」は0(ゼロ)−下請けに支払った消費税=マイナスの消費税が発生します。これをトヨタは「還付金」として税務署から受け取っているのです。だから、トヨタ本社のある豊田税務署は、単体では1,000億円以上の赤字になっています。
 大企業が下請けに発注するとき、下請け側は消費税を転嫁できるでしょうか。形式上は転嫁できても、力関係からして実質的には無理でしょう。それでも下請けは消費税の納税義務者ですから税務署にこれを支払わなければならない。その支払った消費税をトヨタは「還付金」として受け取ることができるのです。ここでも、消費税が弱いものいじめの税金であり、輸出大企業が大もうけできる輸出奨励金の意味合いがあることがわかります。今回5%から8%に引き上がったことで、この還付金額は増えることになります。これが大企業が消費税引上げに賛成の理由です。そして、消費税は法人税減税の原資になってきたのです。
 病院はどうでしょう。医療費は「非課税」になっていますから、患者さんから消費税を取ることは出来ません。しかし、病院も備品、消耗品、医療材料、光熱費などで消費税は負担しています。この場合には、先ほどの0(ゼロ)税率のトヨタと違って、「消費税の還付はない」のです。だから、病院は消費税は負担するが、消費税は患者さんから受け取れないということになります。国は病院に支払っている診療報酬に消費税分は入っていると言いますが、とてもそんな状況にはありませんし、その1割~3割は私たちが負担しているので、非課税もウソということになります。
まとめますと、消費税は収入の少ない人も含めて、誰もが物価という形で一律に負担しなければならない不平等な税金であり、また、中小事業者が消費税を実際に価格に転嫁できていなくても負担しなければならないとんでもない弱肉強食の税金なのです。
消費税は、来年10月には10%への引上げがされようとしています。しかし、消費税を始めた竹下内閣はその数ヶ月後に、5%に引き上げた橋本内閣はやはり数ヶ月後に改造、そして1年もたずに退陣しています。
 今回は増税だけでなく、医療・介護・福祉の削減も一体です。この消費税は、当初「福祉の充実のために使う税金だから増はやむを得ない」と宣伝されていました。しかし、最近は、「福祉のために使う税金だから、福祉も削減しないと国民の理解が得られない」という宣伝に変わってきています。
 4月1日に実施された消費税増税社会保障の改悪合計で、10兆円規模の負担増とも言われています。こんな横暴を絶対に許してはならないことを改めてかみしめている毎日です。