あらためて消費税の本質

Ⅰ「消費税はみんなが負担する平等な税」か?

1.例えばA商店の年間売上げが4,000万円、仕入れが3,000万円、経費(人件費等)が1,000万円だとすると、本来なら年間売上額4,000万円×5%である200万円が、消費者からの預かり税として税務署に納付されるはずです。

2.しかし、「仕入れ税額控除」という仕組みで、仕入額の3,000万円分は仕入先の事業所が払う仕組みになっているので、4,000万円-3,000万円=1,000万円×5%=50万円の消費税をこのA商店は納めることになります。しかし、もともとこのA商店の利益は4,000万円−3,000万円−1,000万円=0円です。だから、このA商店にとっては、消費税は赤字でも納めなければならない売上税(事業税・外形標準課税など)というべきものです。

3.ところが、A商店が輸出企業ですと、輸出先から消費税はとれないので0課税という仕組みになっています。ですから、A商店と同じ営業規模で、年間輸出が4,000万円、仕入れが3,000万円、経費(人件費など)が1,000万円とすると、利益は0ですが、先の計算通りの仕入れにかかった消費税3,000万円×5%=150万円の「還付」を受けることができるのです。

4.さらに人件費等の半分500万円が正社員の給与ではなく派遣労働であれば、これも消費税「仕入れ税額控除」を適用できる(正社員の人件費は適用されない)ことから、3,500万円×5%=175万円の還付を受けることができるのです。

5.このような「還付金制度」があることから、トヨタのある豊田税務署、日産のある神奈川税務署、マツダのある広島海田税務署、造船などの輸出企業が多い愛媛今治税務署、キヤノンのある東京蒲田税務署、パナソニックのある門真税務署、シャープのある阿倍野税務署、村田製作所のある京都右京税務署だけで2,609億円の消費税の赤字(消費税の入ってくる分よりも還付金の方が多い)が計上されています。ちなみに輸出大企業だけで1兆1751億円の還付金があるのです。

6.それでは同じ規模の病院ではどうでしょうか。医療・福祉は0課税ではなく非課税ですから患者の消費税負担はなく、病院も消費税を納税する必要はありません。しかし、病院にも3,000万円の仕入相当分(水光熱費、医療機材、備品、消耗品等)に物価としての消費税150万円が含まれていますが、病院のように非課税の場合は還付はされません。ここが輸出企業との大きな違いです。

7.これが消費税の本当の姿です。実質は
(1)中小業者にとっては赤字でも払わなければならない事業税、売上税 であり、
(2)大企業にとっては儲けの増える輸出奨励金です。
(3)また、政府にとっては、1989年(平成元年)の実施からこれまで経緯をみると法人税軽減の原資とも言えます。
(4)これを庶民が物価という形で負担していることになります。
(5)消費税法には納税義務者の規定(=事業者)はありますが、誰が負しなければならないのか(=担税者)の規定はありません。【国内取引の消費税の納税義務者は事業者ですから、事業者でない者は納税の義務はありません。=国税庁ホームページ】
 結局は中小企業や庶民が泣き寝入りして負担する弱いものいじめの税金ということになります。

Ⅱこの消費税は、当初「福祉の充実のために使う税金だから値上げはやむを得ない」と宣伝されていました。しかし、最近は、「福祉のために使う税金だから、福祉も削減しないと国民の理解が得られない」という宣伝に変わってきています。
 4月1日に実施された消費税増税社会保障の改悪合計で、10兆円規模の負担増とも言われています。

1.持続可能な社会保障制度の確立を図るための改革の推進に関する法律が平成24年8月に成立しました。これは、「プログラム法」といわれるもので、平成26年から平成29年度の社会保障削減の実施スケジュールを定めたものです。
 この法律に基づき、政府は平成26年2月12日、「地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備に関する法案」(58法案の一括提案で「医療介護総合推進法案」と言われている)を閣議決定、国会に提出(参議院先議)、各都道府県、指定都市、中核市に事務連絡を発しました。
 それによると、
(1)医療費窓口負担は、
  ①平成26年度から新しく70歳になった方から現行の1割負担を2  割に引き上げる。
②高額療養費の所得区分の見直し

(2)介護保険は、
  ①27年度から年金収入で280万円以上(上位20%)の方の介護  保険の自己負担割合を1割から2割に引き上げる。
                =一定以上所得者の利用負担の見直し

  ②要支援1,2の方のホームヘルプサービス、デイサービスを平成30   年度までに市町村事業に完全移行する。
              =予防給付の見直しと地域支援事業の充実

③老人ホーム入所者を原則要介護3以上限定し、入所後の減免措置   (補足給付)を単身で1,000万円以上の預貯金のある方には実施せず、  預金を取り崩して支払ってもらう。
  =特別養護老人ホーム(待機者52万人)の重点化と補足給付の見直し

  ④第6期の開始(平成27年4月)で保険料はさらに値上げ。
※現在の高槻市介護保険料は4,442円です。
                  (全国平均307円値上げ?)

(3)国民健康保険の運営は市町村から都道府県に移管させる。このため  の法律案を平成27年の通常国会に提出する。
国民健康保険料も値上げになります

(4)このほかにも、平成26年度からの後期高齢者医療保険料引き上   げ、生活保護費の削減、年金削減(平成26年分は0,7%、国民年金で月  額475円減)、年金保険料の値上げ(国民年金月額210円増で15,25円)  などが実施されます。
また、保育所制度も平成27年4月の募集(平成26年10月頃)か  ら大きく変わり、介護保険制度のように「保育の必要性とどれくらい  の時間保育が必要かという認定」を受ける必要が出てきます。